体調不良からの脱出キーワード 2
ーそれは“余裕と楽しさ”の詰まった“完走”だったー
はじめに
今年の2月27日にアップロードした「体調不良からの脱出キーワード‐それは“自己ベスト”ではなく“完走”だ‐」に書いたポイントは二つあった。ひとつは踵の故障を再び起こさぬように無理にストライドを大きく伸ばそうとしないこと、そして既に試みている私なりの「呼吸法」の実践で、その効用を厳しい時間制限があり、華の京都を走るというプレッシャーのかかる「京都シティハーフマラソン」で確認することであった。その結果によっては今後の私のマラソン人生を左右する大舞台でもあった。
結果と総括
今年(2008年)1月20日に大阪高槻市で行われた「高槻シティ国際ハーフマラソン」で新しい走り方と呼吸法を既に実践し、良い結果を得たこともあって少しばかりの自信を持ってはいたが(下の「附録」参照)、それよりも遙にプレッシャーがかかる「京都シティハーフマラソン」で良い結果が得られるかどうかは走ってみなければ分からない不安なものであった。

当日の朝はこの大会ではあまりないような絶好の天気で、風もなく暖かすぎず寒すぎず、参加者全般に落ち着いた気分が見えた。いつものことだが、厳密に自分のペースをコントロールするために1キロごとのタイムを記録した。下に手元の時計による1キロごとのスプリットタイムを記し、それをグラフに表した。

1 km 5:28 11 km 5:39
2 km 5:01 12 km 5:38
3 km 5:09 13 km 5:35
4 km 5:14 14 km 5:35
5 km 5:25 15 km 5:27
6 km 5:25 16 km 5:23
7 km 5:45 17 km 5:13
8 km 5:31 18 km 5:25
9 km 5:32 19 km 5:14
10 km 5:18 20 km 5:14
Last 1 km 5:05
Goal 1:53:44

 公式スプリットタイム:0-5 km, 0:26:29; 5-10 km, 0:27:30; 10-15 km, 0:27:54
15-20 km, 0:26:29; 20 km-goal, 0:05:32
公式ゴールタイム: 1:53:57, 参考ネットタイム: 1:53:43
私は大阪陸連に個人の登記競技者として登録されているため、この大会では登記登録選手のスタート枠からスタートできる。すなわち招待選手の次の枠からスタートするため非常にペースが早くそれに引っ張られがちになる。ただ、最初の1キロは混雑でなかなか走れないが、それでも自分が予定した5分40秒前後よりはかなり早い。コースに隙間が生じる1キロ以降になると自分のペースがその本当の姿を現す。上のデータで明らかなように、ゆったりペースで走ろうとしていたペースより遙に早く、これまでの京都でのいつものペースになってしまっていることが分かる。周囲が速いこともありなかなかペースを落とせないが、それでもキロあたり7秒ずつ落とし5キロになってやっと5分25秒まで落とすことが出来た。次の1キロは賀茂川沿いの明らかな登りと給水でほとんど予定のペースになったが、その後は平坦あるいは少し下りもある10キロまででは再び速すぎる展開になってしまった。それは、ひょっとすると2年続けて体調不良による10キロでのリタイアを、なんとか克服出来そうな喜びの表現であったのかもしれない。

そこで再びペースを落とすことにし、登り坂であることもあって落ち着いてペースで走り続けることが出来た。13キロで折り返したからは下りということもあって徐々にペースが上がったが、17キロで少しあがりすぎたので再び落とし、残り3キロになってから安心して再びペースを上げ、残り1キロを5分05秒でゴールした(公式記録から見ると、ラスト1キロは5分ジャスト)。それにしても、“もっと遅くてもいいんだよ”と自分に言い聞かせながら走るというのは、多いに安心感を感じるものである。

気温はそれほど高くはならず、10キロあたりでは少し暑さを感じたが、それから北にあがるにつれてそれも気にならなくなり、ペースを落とすのに苦労しなければならないと言う有り難い状況下で走ることが出来て、精神的には非常に楽なレースだったように思う。課題になっていた踵には問題は発生せず、不整脈の問題も全くない理想的なレースで、走り方も呼吸法もうまく機能したことは今後の走りに朗報であった。それを可能にしたのは集中力を切らすことなく呼吸などをコントロールし続けられたことであったと思われる。この一点に今後も高い集中力を維持したいと思う。

なお、この呼吸法が不整脈を気にするランナーになにがしかの参考になることを切に願っている。前回幾つかの呼吸法の例を挙げたが、そのバリエーションは無数にあり、ランナー個人個人に、またその時その時の状況に合わせてやり方を自在に変更すべきだと思われる。ただ、ポイントはひとつある。それは、給水であれどんな理由であれ、比較的規則正しい呼吸が無意識に変わってしまったときには、もちろん私自身の経験からであるが、そのリセットは息を吸い込むことでリスタートするのではなく、息を軽く吐くことからリスタートした方が安全だという感じがしている。
右の写真は、ゴールまであと5 0メートルほどの地点を、平安神宮の鳥居に向かって元気に走っている筆者である。脚は軽かったが、そのように見えるから不思議である。この写真は、友人・森川和憲氏によって撮影されたものであり、ここへの掲載も許可してくださった。厚くお礼を申し上げる。
附録:2008高槻国際シティハーフマラソン
1月20日の高槻シティ国際ハーフマラソンの日は本当に寒い朝であった。決めていたことは、目一杯走らないこと、ある安定した呼吸法を守ること、給水ポイントで冷たい水を一気に飲んだりしないこと、などで、目標はできれば2時間以内で余裕を持って完走することでした。結果は大変よく、不整脈はもちろん発生させず、踵の痛みも再発させず余裕を残してゴール出来た。去年は1時間49分25秒で8分ほど落としましたが、気負って前を追うこともせず予定の行動を貫くことが出来た。結果は、

5 km  28:54(5:47/km)
10 km  27:28(5:30/km)
15 km  26:59(5:24/km)
20 km  28:30(5:42/km)

Goal 1時間57分27秒(公式ガンタイム:1時間58分42秒)
Last 1 km 5:02

ハーフは5:43/kmで走ると2時間となる。15-20キロあたりは完走を確実にするために少しスピードをダウンしたことと、カーブの多いコースなのでペースは落ちている。最後の1キロは怖いものはもうないので少しスピードアップしてキロ5分でカバーし、ほぼ完璧なレース運びを実現した。ゴール後も特に疲労感もない楽なレースで、余裕を持って走ればハーフも苦しくはないことを証明したようなレースであった。このペースは2005年のホノルルマラソンとほとんど同じペースで、その時に感じた圧倒的に“楽な感じ”をこの時も楽しめた。

2007年長野マラソンの途中リタイアから5ヶ月に及ぶ休養後のマラソンとしての初完走が、新しい呼吸法などを取り込んだ私なりの走り方に自信を持たせ、今回の京都シティハーフマラソンの好結果を生み出したのだと思っている。
この2枚の写真は残り5キロ地点のもので余裕を持って走れていることがよく分かる。これらは友人・畑野勝義氏によって撮影され、掲載の許可もいただいた。畑野氏のご好意に深く感謝したい。
                          (2008年4月4日)