体調不良からの脱出キーワード 4
ー右ふくらはぎ痛解消に、私には難しい議論が必要だったー
はじめに
今年の長野マラソンを中途リタイアした私は、秋の新しいシーズンに向けてしっかりとトレーニングをしていた8月中旬ころ、突然右ふくらはぎ痛に襲われて走れなくなり、それ以来一進一退を繰り返しながら9月後半まではっきりした故障原因の解明と故障解消のめどが立たない日々が続いた。9月後半にいつものように愛知県小牧市の五体治療院(スポーツマッサージ、院長小山田良治氏)の治療を受け、かなり痛みが和らいだところでいろいろな走り方の試行錯誤を繰り返した。そこから得たヒントをもとに、小山田氏と電子メール30通ほどを往復させる議論を繰り返した結果、わずか1週間も経たない間にほぼ答えと思われるものを導き出すことができた。ここでは、自らの理解の確認のため、また興味を持たれる方々のためにその議論の経過をここに再現したい。
メールのやりとりの経過
小山田さま

 19日(9月19日のこと)にはお世話になりました。マッサージ治療で凄く助かりました。
 ところで、先日の治療のあとは徐々に回復に向かっているようですが、ゆっくりと15分くらいジョギングしますと少しずつまだ違和感が出てきます。それがあまり大きくならないところで止めていますが、その違和感は、右足の着地の際、少し踵(かかと)左側からの着地を意識すると軽めのような気がしますが、そんなことを意識しない方がよいでしょうか? ひょっとすると、私の右の着地は無意識に外側に重点があるために軽めに感じるのでしょうか。確かに昨年の長野マラソンで右脚の腸脛靭帯炎になりました。なにはともあれ、先日の治療の際に小山田さんが、右足の外側を跳ね上げるような感じの使い方をしているのでは、と言われたのが気になっています。はたしてどうしたものでしょうか?09/26

中西さま

 右足着地で少し踵左側を意識することで自然に歩隔(右足と左足の着地時の間隔)が広がっていると思います。これでOKですねぇ〜〜〜。
重心が外側ではなく内側にあり、それを足関節の外反でバランスをとっているように感じていました。必要以上に右足指が跳ね上がってしまっている(外反)…。それを下腿内側のテンションで引っ張っている張りだと思います。歩隔が広がれば、外反の必要がなくなるため緩和されると思います。09/26

小山田さま

 そう、ちょっと広がる感じはしますね。うん、これでうまくゆくかな? 今日、ちょっとジムではなく田圃の中の農道で試してみます。そうすると、歩くときもその感じで歩くんですね? やっぱりいろいろ試していろいろ聞いてみるものですね。聞くのは私の特技ですので。09/26

 4時頃からここ1ヶ月半経験のない1時間20分のジョギングとウォーキングをやってきて、走りの改善策の答えが出たような気がしました。うれしい〜!

> 右足着地で少し踵左側を意識で自然に歩隔が広がってると思います。
> これでOKですねぇ〜〜〜。

 やっぱりこれが正解でした。はじめから右足踵の左端を意識して走りました。同時に2直線走行も意識しました。これは以前よく議論したことでしたが、いまひとつ私にはしっくりした議論ではなかったのですが、今日はしっくり来ました。その結果、一度も右ふくらはぎに違和感を感じることはありませんでした。私の走りの改善策の答えが出た!という実感がしました。

> 重心が外側ではなく内側にあり、それを足関節の外反でバランスを
> とっているように感じていました。
> 必要以上に足指が跳ね上がってしまっている(外反)…。
> それを下腿内側のテンションで引っ張っている張りだと思います。
> 歩隔が広がれば、外反の必要がなくなるため緩和されると思います。

 ここのところをはっきりさせたいのです。本当はどれが先だとは言えないのでしょうけど、いったい何が先にあるんでしょうね。つまり、「重心が内側にあり」ということは、右内転筋で右脚を内転させて走る力が強いことが右足の重心が内側に来すぎていて、それが右足外側からの着地を強要し、結果として右足指を跳ね上げている。こう考えてもいいのですか?
 とにかく、はっきりさせたいのです。09/26

小山田さま

 先のメールで以下のように書きました。
「重心が内側にあり」ということは、右内転筋で右脚を内転させて走る力が強いことが右足の重心が内側に来すぎていて、それが右足外側からの着地を強要し、結果として右足指を跳ね上げている。こう考えてもいいんですか?
 この中で、「右足の重心が内側に来すぎていて」と書きましたが、ここのところが自分でもはっきりしない。「着地時の身体重心が着地脚の真上になくて内側に偏っている」ということでしょうか? こうだとすると上の私の言い分はおかしいですね。小山田さんの言うように「足関節の外反」でバランスをとっているのかもしれない。そうすると、もう一つの質問は、小山田さんの言う「それを下腿内側のテンションで引っ張っている」とありますが、ここで言う「それを」をいうのはなにを指しますか? 「下腿内側のテンションが足関節の外反を引き起こしている」?と考えるのですか? そうすると、その場合の筋のつながりはいかなることになるのでしょうか。
 以上のことを教えてください。

 今日はかなりはっきりした「2直線走行」もやってみました。ちょっと慣れませんがスピードが上がれば安定した走りになるような気がします。この議論は何年か前、まだ私が現役の頃(7年以上前だと思います)に小山田さんとした覚えがあります。今頃その話が現実味を帯びてきましたね、驚きました。この1ヶ月半、どんなにゆっくり走っても違和感を感じていましたが、今日それが消えました!!! 明日はどうでしょうか。楽しみです。09/26

中西さま

> 「重心が内側にあり」ということは、右内転筋で右脚を内転させて走る力が強
> いことが右足の重心が内側に来すぎていて、それが右足外側からの着地を強要
> し、結果として右足指を跳ね上げている。こう考えてもいいのですか?

 そのとおりです。

>  この中で、「右足の重心が内側に来すぎていて」と書きましたが、ここのと
> ころが自分でもはっきりしない。「着地時の身体重心が着地脚の真上になくて
> 内側に偏っている」ということなんでしょうか? こうだとすると上の私の言
> い分はおかしいですね。小山田さんの言うように「足関節の外反」でバランスを
> とっているのかもしれない。

 立位で歩隔を股関節幅にします。右足だけを強く外反していただくと、踵骨の内側に荷重するのが解ると思います。着地の重心位置は、筋肉の張力で変わります。おそらく、腸脛靭帯を痛められたとき、それをかばう動作の副作用と思われます。(注1)

> そうすると、もう一つの質問は、小山田さんの言う
> 「それを下腿内側のテンションで引っ張っている」とありますが、ここで言う
> 「それを」というのはなにを指しますか? 「下腿内側のテンションが足関節
> の外反を引き起こしている」?と考えるのですか? そうすると、その場合の
> 筋のつながりはいかなることになるのでしょうか。

 外反の拮抗作用です。強く外反がかかり過ぎないように腓腹筋の内側テンションで保護してくれていた張りです。09/27

中西さま

>  前回の案件、「2直線走法」と考えてもよろしいか?との件、いいんですよ
> ね? 昨日全く久し振りにジムで10キロを1時間15分かけて走りましたが、全
> く順調でした。意識的に「2直線走法」で走りました。

 順調なご回復何よりです。09/30
小山田さま

 私はまだ少し用心しながら走っていますが、とにかくいまの走り方で(二直線走法=踵内側に意識)大丈夫だと感じています。この過程をまとめて整理しておこうと思っています。 さて、まとめておきたいのですが、いま私は寺島さんの本の119、137、138ページ(寺島俊雄著、第一解剖講義ノート、系統解剖学篇2007年度版)を眺めながら書いています。

 なにが始まりであったかは分かりませんが、まあ、昨年の腸脛靭帯炎だったとしましょう。その副作用として内転筋を使って右脚を内転させて走る力が強くなったことから右足の重心が内側に来すぎていて、つまりは、前頸骨筋などを使って足首の内反を起こさせ、右足外側からの着地を強要することになっていた。その代償として長腓骨筋や腓腹筋の外側テンションなどを使っての外転から右足指を跳ね上げていたようである。その外反の拮抗作用として強く外反がかかり過ぎないように腓腹筋の内側テンションで保護してくれ、その部分の張りも発生していた。全体として下腿筋にアンバランスが発生し、それがふくらはぎの痛みとして発生していたと思われる。

 確かに、かなり前から着地した右足の内くるぶしに後ろから返ってくる左のシューズの踵の硬い部品が接触し、皮が剥けて出血することが頻繁に発生していた。そこで、ふくらはぎの緊張を小山田氏によるマッサージでとるとともに、走っている際に着地する右足踵の内側を意識して走ることを試みた。するとふくらはぎの痛みが感じられないことが分かり、一挙に解決策が浮上した。要するに、2直線走法をきちんと守ることが必要だったのです。

 ここでひとつ質問です。二直線走法とは、股関節幅での走行だと思いますが、その幅が有効な理由は、その幅で走ったり歩いたりすることが、最も内転筋や外転筋を、ひいては下腿の筋群をアンバランスにしない構造であると考えるのですか?
追加質問ですが、私の右脚の張りはどこが相対的に強かったのですか? 外側? 内側の腓腹筋の筋頭? あるいは長腓骨筋(これは右足外反筋ですよね)? どうだったのでしょうか。10/05

中西さま

 歩隔が狭くなると、内転筋が終始緊張し外転の作用が低下します。着地期は、足関節を外反させなければ安定した着地ができません。
張りの件ですが、内側です。着地期に過剰に外反させないように拮抗して腓腹筋内側に緊張が必要になっていると思われます。10/05

小山田さま


 上の「着地期は、足関節を外反させなければ安定した着地ができません」というのは、「歩隔が狭くなる」時の話ですか? あるいは、いつでもということですか? 前者の時ですよね?
外側広筋 また、どちらかといえば内側に緊張があったということですね。上の質問でちょっと聞きたいのですが、足首の外反を担当するのは長腓骨筋ですね? 腓腹筋の外側部分も関与しますか?10/05

中西さま

 歩隔が狭くなると、屈曲では足部外側が接地してしまいますので外反で補おうとします。歩隔が広がれば自然に足関節は外反から屈曲へ…。

> ということは、どちらかといえば内側に緊張があったということですね。上
膝蓋骨 > の質問でちょっと聞きたいのですが、足首の外反を担当するのは長腓骨筋です
> ね? 腓腹筋の外側部分も関与しますか?

 これ!今回の核になる部分です。

 基本的に腓骨筋は足関節の伸展(底屈)筋です。その筋が屈曲位の足関節では外反に作用します。つまり、蹴る方向に作用をしていないのに蹴ると同じ筋が緊張をしてしまっているという現象が起こるということになります。10/05

小山田さま

> 歩隔が狭くなると、屈曲では足部外側が接地してしまいますので
> 外反で補おうとします。
> 歩隔が広がれば自然に足関節は外反から屈曲へ…。

 外反というよりも正常な屈曲(足を上に上げる)になるということですね。ここのところはよく分かる気がします。

> これ!今回の核になる部分です。
> 基本的に腓骨筋は足関節の伸展(底屈)筋です。
> その筋が屈曲位の足関節では外反に作用します。
> つまり、蹴る方向に作用をしていないのに蹴ると同じ筋が緊張を
> してしまっているという現象が起こるということになります。

 ここのところ、ちょっと待ってください! 上の「基本的に腓骨筋は足関節の伸展(底屈)筋です」のところの「伸展(底屈)」は「屈曲(底屈)」の間違いですね? そして、「その筋が屈曲位の足関節では外反に作用します」というところは、もともと腓骨筋は外反筋でもあるわけですから、正常の着地でも「その筋が屈曲位の足関節では外反に作用します」。従って、私のようにより外反する着地をする場合には、より外反筋が緊張し、蹴りすぎるように見える緊張状態となる。
 こう解釈してよければ凄くよく分かる。私は以前から小山田さんに「蹴りすぎているように見える」とよく言われていたことを思い出します。こう考えると凄く理解できる!!! これでよいでしょうか?10/05

中西さま

>  ここんところ、ちょっと待ってください! 上の「基本的に腓骨筋は足関節
> の伸展(底屈)筋です」のところの「伸展(底屈)」は「屈曲(底屈)」の間
> 違いですね(寺島、94ページ)? 

 屈曲=背屈、伸展=底屈 の解剖書とこの逆の解剖書があります。寺島ノートの場合は後者のようです。

> そして、「その筋が屈曲位の足関節では外
> 反に作用します」というところは、もともと腓骨筋は外反筋でもあるわけです
> から(寺島、119ページ)、正常の着地でも「その筋が屈曲位の足関節では外
> 反に作用します」。従って、私のようにより外反する着地をする場合には、よ
> り外反筋が緊張し、蹴りすぎるように見える緊張状態となる。

 腓骨筋は基本的に足関節の伸展(底屈、足先を下に下げる)です。外反筋というより他の筋と共同で外反の作用を行います。ここですが、着地時の外反は外反筋の動きではなく股関節からのあおりだと思います。

>  こう解釈してよければ凄くよく分かる。私は以前から小山田さんに「蹴りすぎ
> ているように見える」とよく言われていたことを思い出します。こう考えると
> 凄く理解できる!!!
 
 中西さんは確実に蹴りすぎていると思います。10/05

ここでメールのやりとりについては一旦停止し、画像を表示します。なお、メールの続きは次のページで再開します。
この記事に出てくる「内反」、「外反」そして「屈曲」とは左図のような足首の動きを指す。注意したいのは、ここで言う「屈曲」は足先を上に向けるような足首の動きで、この動きを「伸展」あるいは「背屈」とも言い、二つの言い方が混在するようである。それについては文中でも言及している。なお、この図は五体治療院院長 小山田良治氏が作製したもので、それぞれの足関節の動きに関係している筋を仕分けている。ここに小山田氏のご厚意に感謝したい。
(注1)内転筋と腸脛靱帯炎の関係については、本ホームページの「体調不良からの脱出キーワード3」をご覧下さい。